おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

鳥―デュ・モーリア傑作集 ダフネデュ・モーリア 創元推理文庫

ハヤカワの異色作家短篇集「破局」が良かったので、そういえば買っておいたはずだと思い出し、積ん読の山から掘り出して読み始める。この前買ったような気がしたのだが、奥付をみると2000年の発行。時の流れは速いなあ。
「恋人」
 映画館のもぎりの女の子に一目ぼれした話。その女の子には秘密があった。そのなんというか、うまいなあ。語り過ぎないところも含めてうまいなあ。
「鳥」
 ヒッチコックの映画の原作として有名だが、映画よりもひしひしと迫る恐怖と絶望感がすごい。
「写真家」
 ストレートな犯罪もの。特別なひねりはないものの、きっちりと過不足なく書ききっている。うまい。
「モンテ・ヴェリタ」
 神話とか宗教とかそういう種類の話。運命に従う人物を説得力をもって描写するのは難しいのだが、ちゃんとやっているところがすごい。
「林檎の木」
 うざい女房が死んでほっとしたのもつかの間、庭の林檎の木が女房を思い起こさせる。この話、客観的にみると最後の方まで何も起こっていないのだが、主人公の視線でみるとサスペンスに満ちている。これまたうまい。
「番」
 うまい。
「裂けた時間」
 えすえふなんだけど、不可解状況に陥った主人公の困惑と恐怖を描いて過不足ない。
「動機」
 はーどぼいるどなんだけど、自殺の動機を探る探偵の話。
ふつうのひとのふつうの感情をそのとおりに描写する能力がすごい。ストレートは剛速球を真っ直ぐに、カーブは落ちずに曲がる。何処へ行くかわからないナックルは投げない投手。