おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

黒いカクテル ジョナサン・キャロル 創元推理文庫

パニックの手に続く短編集
こちらの読解力のせいかも知れないのだが。、ジョナサン・キャロルの作品には、何を書いているのかさっぱり判らない一節が一定量含まれている。
長編だと、何気ない描写とそれに潜む闇の仄めかしが上手いので、それに惑わされて気にならないのだが、短篇だと辛いものがある。それでも読んでしまうだけの魅力があるところがすごい。

  • 「熊の口」 金の真実に気がついた男の運命。その真実がすごい。キャロルしか思いつかないようなアイディア。奇想というのともちょっと違う。
  • 「卒業生」 中年のまま、学生時代に舞い戻るという悪夢。妻に助けを求めるが……というところが更に恐い。
  • 「くたびれた天使」 恋人が”同時に”ストーカーである話。そこらへんの描写は、さすがキャロル。最期に仕掛けがあるのだが、仕掛けにしては、ちょっと素朴すぎるかも。
  • 「あなたは死者に愛されている」 車の事故が発端。そこから話が二転三転してとんでもないところに連れていってしまうキャロルの真骨頂。
  • 「フローリアン」 父親の誰にも知られない密かに歪んだ愛情。
  • 「我が罪の生」 嘘についての法螺話。
  • 「砂漠の車輪、ぶらんこの罪」 失明することが決まった男と写真機の話。
  • 「いっときの喝」 家の記憶。
  • 「黒いカクテル」 少年の時に助けてくれた友人は、数十年後も15歳のままだった。というところから、またしてもとんでもないところへ連れていかれてしまう。