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おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

11の物語 パトリシア・ハイスミス 早川文庫

ガラス瓶に這うカタツムリの写真が綺麗な表紙。

解説によるとこの序は作者本人からばっさりやられたそうで可哀相です。誉めてるのになあ。

  • かたつむり観察者

ミステリゾーン風のシンプルな話だけど、なぜかいつまでも心に残る。中学生くらいだったらトラウマになったかも。そういえば小学生の時にカタツムリを飼ったことがあります。世話をしないで放っておくと殻の口に膜を張って冬眠するので飼育は楽でした。

  • 恋盗人

プロポーズの手紙に返事が来ない。待っても待っても。常に郵便箱を覗いているうちに、隣の郵便箱に封筒が入りいぱなしであることに気がつき……。

  • すっぽん

早川文庫「幻想と怪奇1」で既読。母親の支配下にある子供が。最後のページの静かな終わり方はうまいなあ。

  • モビールに艦隊が入港したとき

夫の横暴に耐えかねた妻が夫を殺害し、旅に出る。その先々で過去を振り返る。不安とどうしようもなさとやりきれなさが胸に迫る。

  • クレイヴァリング教授の新発見

早川文庫「幻想と怪奇2」で既読。怪奇大作戦風。最近、時間感覚がめちゃくちゃで、1990年発行とかつい最近じゃんと思ってしまう。へたするとここを読んでいる人で90年にはまだ生まれていない人もいるんだろうなあと思うと愕然とします。私は怪奇大作戦をリアルタイムで見ています。あれ見た後では恐くて一人で風呂に入れなかったなあ。

  • 愛の叫び

老婦人二人が共同で一つの部屋に住む。二人はいがみ合っていたが離れられず。こういうやりきれない状況を放り出す話がうまいねえ。

  • アフトン夫人の優雅な生活

精神科医へ夫の異常さを訴えるアフトン夫人の話。すいません。これはよく判りませんでした。放り出しているのは判りましたが、どちらの方向へ放り出しているのか。

  • ヒロイン

新しく雇われた保母は、仕事に燃えていた。異常なほど。恐いねこれ。

  • もうひとつの橋

交通事故で妻と子を亡くした男が旅行する。橋で見かけた男は車に飛び込み自殺する。泊まったホテルの近くで靴磨きの少年と仲良くなる。自殺した男の妻に匿名で寄付をする。

  • 野蛮人たち

いい歳をして道で野球をする男達がうるさいので。

  • からっぽの巣箱

よくわからない小動物が家の中を走り回るので猫を借りてくる話。

不安を取り扱って不安のまま放り出すハイスミスの手法は他に例を見ないような気がする。普通は書いているうちに不安になって、なにかカタをつけてしまいそうなものだが。不安は感情のうちで強烈なものだから取り扱いが難しい。そういうわけで現代の作家は、よくわからない微妙な感情を取り扱うのだけれど。微妙な感情を訴えるために叫び散らすという手法を考え出した町田康とか舞城王太郎と比較したいような気もする。
パトリシア・ハイスミスは二度ブームになったそうだが、未だに長編を読んだことがない。この際長編を読んでみるかと思って探してみるが見つからない。