おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

パンク侍、斬られて候 町田康 マガジンハウス

パンクなので現体制への批判である。現体制とは現在の小説世界を含む。
前半は現代語を喋る侍たちのスチャラカ時代劇。その軽さが茶山半郎*1が登場するあたりから反転し始め、ラストでは「軽さ」というものの持つ「重さ」が示される。
離れ業である。
話の構造として筒井康隆の「虚構船団」と舞城王太郎の「九十九十九」を思い出しました。
今まで見たことが無い世界を提示しているにも関わらず、完全であり、それにも飽き足らず破綻しており、さらにそれでも足りずに外の世界に通じているという、私定義の手放しで傑作であるべき条件を満たしている。
惜しむらくは、登場人物の軽さを描くことに重きを置いているためか、描写の掘り下げが足りないきらいがあって、その結果登場人物に共感を覚える暇が無い。それがあればなあ。文句なしで傑作なのだがなあ。

*1:まじめな顔で深刻な話をしているが、顔には珍妙な刺青をしている茶山半郎。しかし、茶山半郎って、「茶」山「半」郎……?