おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

元気なぼくらの元気なおもちゃ (奇想コレクション) ウィル・セルフ 河出書房新社

「リッツ・ホテルよりでっかいクラック」
 麻薬中毒者がシラフの時に抱く妄想。ちょっと期待はずれかなと思い始める。しかし、寓話っぽいけど何を寓しているのかわからないところが良い。
「虫の園」
 虫と意思の疎通をする男の話。奇想にしてはストレートかな。次に期待する。
「ヨーロッパに捧げる物語」
 言葉の発達が遅い幼児を医者に診てもらう。理由がわけわからない奇想小説。これはいいや。これも何に関する寓話なのかさっぱりわからないのが気持ちいい。
「やっぱリデイヴ」
 出会う人出会う人、みんな名前がデイヴだったら。これは何がなんだかわかりませんでした。
「愛情と共感」
 内なる子どもが肥大化した現代の大人を皮肉る話。アイディアは良いんだけどなあ。オチがいまいち。オチなんてどうでもいいのかもしれませんが。
「元気なぼくらの元気なおもちゃ」
 精神分析医がヒッチハイカーを車に乗せる話。外見上では単にこれだけの話ですが、これはホームラン。
「ボルボ七六〇ターボの設計上の欠陥について」
 「元気なぼくら…」と同じ主人公の話。話のスピードを上げて疾走感を楽しむ話。なんか物足りないのはエロとグロが足りないからだろうか。
「ザ・ノンス・プライズ」
 「リッツ・ホテル…」の続編。いい話……なんだろうなあ。きっと。

全体的に、元麻薬中毒者が書いた話ということで、タガの外れた話であるところは良いのですが、締めるべきところまで外れていたり、もっと外すべきところで中途半端だったりするところが残念。作者は、基本的にいいひとなんだろうなあ、きっと。