おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

「ニンギョウがニンギョウ」西尾維新 講談社ノベルス

函入でハトロン紙のカバーをめくると染みたような表紙。活字はカスレている。
レジへ持って行くと1500円だったので ちと驚いたが、これだけ凝った装丁ならば仕方ないか。
十七人目の妹が四回目の死を迎えたので映画を見に行く所から始まる四篇。
幻想小説に、夏目漱石風良く判らない自作故事成語を振り掛けている。この作者の作品を読むのはこれが初めてだが、かなりかなり私好み。残念ながら私には妹属性がないので、終始妹妹妹とウザく感じられたのが減点対象。また、カタカナ外来語の使い方が普通なところがもったいない。幻想世界を構築しても、カタカナを通じて現実世界の作者への空気穴が開いていてそこから現実からの隙間風がプウプウと吹き込んでくる。このような類の小説は、現実に逃避してはいけません。熊少女の容姿が全く不明なのが加点対象。
完全なる水晶球を磨き上げるには熱意が足りないが、さりとて水晶球を破壊するだけの意味不明エネルギーも見当たらない。あとがきで、一気に潜水をするように書き上げたとあったが、潜水したままそのまま水中に住み付き、妖怪に変化(へんげ)する勢いがあれば傑作になったろうにと悔やまれてならない。