おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

二体さん

将軍様、御用というのは」
あいかわらず将軍は暇でしょうがないようで禅宗の小坊主を呼び出しては難癖まがいの頓知問答を強制している。
「これは二体殿、わざわざ来てくれてご苦労である」
そう言うと将軍はいきなり二体の目の前で手を打ち鳴らした。
「この音は右手から鳴るのか、左手から鳴るのか、どちらじゃ?」
禅の考案、隻手の音声である。二体は困った。言葉の意味に頼る事なく仏の悟りに近づく為の方法が考案である。その事からこの依怙地な独裁者に説明しようとしても無駄であろう。ここに饅頭でもあれば半分に割ってどちらが甘いでしょうかぽくぽくぽくぽくチーンなどとごまかすのだが……。
「どうした二体?ワシには説明できぬと申すか。この教養のない田舎侍あがりのワシなどには説明してもわかるまいと申すか」
仕方がない、適当にごまかすか。二体は話はじめた……

「最初、世界は混沌に満たされ一体であった。神が光あれと言うと一体の身体が露わになった。神は一体の肋骨をとりもう一体を作った。世界は二体で満たされた。一体ともう一体はそっくりであったので区別がつかなかった。
世界が二体であったので彼らは密着し、お互いの区別がつかなかった。一体が身体を動かすと一体は自分が動かしていると思い、動かした一体は動かした自分と動かしていない自分は共に一体であると考えた。世界はまだ混沌であった。
ある日一体が手を動かそうと考えた。片手を振るともう一体も片手を振り、お互いの手がぶつかり音がなった。一体は自分が一体であると思っていたので驚き、この一体は片手を振り、自分である目の前の一体も片手を振り、詰まる所片手だけであるのに音声が鳴り響いた。

隻手の音声である。

このように、世界の始まりにおいては音声は全て片手から発せられていたものでございます。彼ら一体達がどのようにして互に区別をつけるようになったか。夜も更けてまいりましたので、今宵はここまでにしとうございます」

千夜一夜物語かよ。姑息な真似をしよる。生意気なこやつを打ち首にせよ」

「そ、そんなぁ〜」



「どうやら一体に引き続き二体もやられたようだな」

「なさけない。しかし彼らは体四天王のうち最弱」

「ここは私めが」

「おっと五千万体が出るとは、もう我々の黒いカバンのチャックは閉まらないな」

「時事ネタはすぐ古びるぞ」

「ではお手並み拝見といこうか……」