おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

蘆屋家の崩壊 津原泰水 集英社文庫

あ、そうなんだ。と思い積んであったはずの蘆屋家の崩壊を探す。滅多にないことだが、すぐに見つかる。背表紙にブックオフの値札が貼ってある。よく探せば新刊で買って積んだままになっているのもあるはずだが、腐海の底まで降りる気にはなれない。
なんで積んだままだったのかな。記憶をたどる。どうも怪奇おちゃらけ珍道中的な話だと思い込んでいたらしい。題名は駄洒落だし、主人公の相方は伯爵と呼ばれている。間違えていたのは一概に私の所為とは言えまい。
「半曲隧動」 連作短編のつかみ的切れ味のいい怪談。怪奇現象の発生に関する新理論も興味深い。
「蘆屋家の崩壊」 蘆屋家崩壊に対して当事者のようでありそうでもない距離感のとり方が絶妙。
「猫背の女」 こりゃ怖い。カチカチ山の新解釈。毎回、車が破壊されるかと思っていたので、残念。
「カルキノス」 探偵小説の元祖の直系の子孫。でも怪奇小説だなあ。
「長鼠記」 鼠駆除の話。ここらへんから次第に幻想小説に傾いていく。最後の方は登場人物が諦めきっているところが心を揺さぶる。
「ケルベロス」 よくある祟りの話といえばそうなのだが、主人公と怪奇現象の距離のとりかたが絶妙。
「埋葬虫」 虫を喰った男の話。世にも怪奇な物語風。
「水牛群」 圧倒され癒されました。幻想小説の傑作ではないだろうか。

かなりお勧めの本です。三十過ぎて定職にもつけないと自虐の台詞を吐く主人公に共感できれば更にお勧め。