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おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

パズル崩壊 法月綸太郎 集英社文庫

「重ねて二つ」 男女の上半身と下半身をつなげた死体が一つ。密室からどうやって死体の残りを運び出したか、というトリックにのみに集中するために、犯人は誰かという謎はわざとなおざりにされている。短編だと仕方ないとは言え物足りない。
「懐中電灯」 懐中電灯の電池により犯罪が発覚したのは何故か。細かいところに拘るトリックは、それだけでは「だから何?」という感想を抱き勝ち。
「黒のマリア」 密室の中に死体と金庫に入った死体とロッカーに閉じ込められた女と。三重密室の謎。怪談風味が成功しているのかしていないのか微妙なところ。夜の刑事部屋の描写は雰囲気が出ている。
トランスミッション」 誘拐犯から掛かってきた間違い電話。どうして村上春樹の文体模写が必要だと思ったのか問い詰めたい。もう少し書きようがあるのではないか。具体的な謎と村上春樹文体は相性が悪い。
「シャドウ・プレイ」 さらに村上春樹ドッペルゲンガー物。こちらは悪くない。でも、この文体と謎の解決とは相性が悪い。ミステリと文体のどちらに傾いても崖から落ちてしまう微妙なバランスの上に、かろうじて立っている。
ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?」 ロス・マクドナルドフィリップ・K・ディック。観察者であるミステリと当事者であるSFは水と油。水と油を混ぜて冷やして飲んでみました的な読後感。
「カット・アウト」 抽象画家ジャクソン・ポロックに対する評伝部分以外は、何故かグッとこない。タイトルでネタバレなのだがいいのだろうか。
「……Gallons of rubbing alcohol flow through the strip」 長編の冒頭部分。冒頭だけで「長いお別れ」をやろうとしているのがわかるが、わかるようなものを書いていいのだろうか。

すいません。なんか辛口になってしまいました。やるべきことを探して迷っている作家の苦悩が伝わる短編集でした。ミステリに対する自己評論的な作品集ですが、作家は考える前に跳ぶほうが良いのではないでしょうか。たとえそこが崖でも。
ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?」のバカミステリぶりには、もっとこの延長上のものを読みたい気もするのですが、きっとそれは作者の望む方向ではないでしょう。