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おそらくは半茶のblog

流行に乗り遅れてはいかん!とブログをはじめてみたおっさんです。

グールド魚類画帖 リチャード・フラナガン 白水社


 19世紀オーストリアへの流刑囚人ウイリアム・グールドが描いた魚の水彩画
http://images.statelibrary.tas.gov.au/Search/Search.asp?Keywords=Gould
にインスパイアされて出来た書物。


 「グールドが留置所にて描いた、魚の絵と書いた手記」は捨てられ、「もう一度最初から書き直された手記」が古い家具の中から発見され、「専門家からは贋物と鑑定され」、パブのテーブルの上から忽然と消え去り、その手記の記憶が語られる。執拗なまでに繰り返し「本物ではない」と語られることにより、いま読んでいるこの本はいったい何物かということが揺らいでくる。


 それを補強するように最初の語り手の仕事は、アンティーク家具の偽造。グールドの名前は他人の名前。駅が一つしかないため役に立たない環状線の建設。客がこない麻雀館の建設と破壊。グールドは存在しない犯罪のために死刑判決を受ける。嘘や虚構のイメージが散りばめられる。


 とすると、各章を色違いのインクを使って印刷というのは、獄中でインクを入手できないので代用品で書いたという本当らしさのほとんど唯一の主張。


 と、ここらへんまでで前半部分。後半では更に、今読んでいるのは一体何なのか混乱しつつ読み進むことになる。


 しかし、全篇を色インク使用に出来なかったのは悔やまれる。つくづく悔やまれる。