「歌うダイアモンド」ヘレン・マクロイ 訳:好野理恵他 晶文社ミステリ
ヘレン・マクロイは「家蠅とカナリア」「割れたひづめ」「一人で歩く女」などの本格推理長篇で知られているらしい。読んでないけど。
この短編集は、本格・サスペンス・異色短篇・SFとジャンルを問わず収録されていて、各短編がどのように結末を迎えるのか予想がつかず面白かった。つまり提示された謎が、論理的に解決されるのか、幻想小説風に謎が発散していくのか読者の方で心構えが出来ない。なるほどこういう短編集もありか。
- 東洋趣味
清朝末期の北京でおこったロシア公使夫人の失踪事件を振り返る。これは確かに名作。
- Q通り十番地
政府に禁止されたある物を提供する闇酒場にもぐりこむ主婦の話。
- 八月の黄昏に
これは冒頭にSFであることが宣言されているからネタバレしてもいいか。著者はSF的アイディアよりも、若さの放漫さを描く方に力が入っているので、アイディアの消化不良の感が否めない。
- カーテンの向こう側
深層心理を正面から描いたとしか紹介のしようがない。
- ところかわれば
SFショートショート。オチに時代を感じさせる。
- 鏡もて見るごとく
ドッペルゲンガーもの。
- 歌うダイアモンド
トランプのダイアの形の未確認飛行物体を目撃した人々が、謎の怪死をとげる。
- 風のない場所
静かな終末SF。静かで暖かく終末を迎える。
- 人生はいつも残酷
死んだことになっていた男が故郷に舞い戻り、ふたたび殺人に巻き込まれる。